2025年のノーベル生理学・医学賞を「免疫のプリンシプルを覆した男」坂口志文先生が受賞されました。2019年に『ドクターの肖像』取材とインタビューでお会いさせていただき、その免疫学一筋に捧げた半生を描かせていただきました。
制御性T細胞、英語ではRegulatory Tと名付けられた細胞は、免疫のブレーキ役といわれ、外敵から身体を守るメカニズムで重要な働きをしている。たとえば花粉症の人は花粉が体内に入ると、花粉を撃退しようとくしゃみでそれを撃退する。ところがその攻撃が止まらなくなるのが免疫異常である。いわば「ブレーキ」が効かなくなって鼻炎症状という自己免疫疾患に苦しむ。そのブレーキ役になる細胞が制御性T細胞である。
「撃ち方やめ!」という細胞の発見のきっかけは実験で使っていたマウスの死。ブレーキの止まらなくなる自己免疫疾患で死んだマウスから、胸腺を取ると死なくなった。なぜか?胸腺に含まれた細胞がカギを握っていた。しかしそんな細胞は教科書にも大学や研究所にも、どこにもなかった。誰からも認められない長い研究の旅が始まった。坂口氏はこう思っていた。
「ほんとうにそこにおるんや」
国際学会で発表すると「そんな細胞はない!」「嘘をつくな!」と罵倒された。「いつまでうさんくさい研究をしているんだ」と呆れられた。めげずに研究を続けると、T細胞の存在を証明する研究が世界各地からぽつぽつ現れてきた。同時受賞のFoxP3遺伝子研究は、自己免疫疾患の原因遺伝子がFoxP3の異常であるという内容で、この遺伝子が変異するとT細胞が生まれない、つまりT細胞こそ免疫暴走の鍵を握っていることが証明されました。
詳しくは、内容はなかなか手強いですが、研究も人生も網羅的包括的に書いた『ドクターの肖像』(ドクターズマガジン 2019年11月号)をご参照ください。人間の体の進化にも触れたコメントもあり、実に深い内容です。当時からノーベル賞期待を込めて書いた文ですが、それから丸6年が経ちました。
「ものごとを成し遂げるのはけっこう時間がかかるものです」
昨夜(2025年10月6日)遅く、受賞の一報を自分のこと以上に歓喜して受け止めました。坂口先生、おめでとうございます。



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